ヨーロッパ発着便フライトが3時間以上遅延 or キャンセル or 搭乗拒否になったら賠償金を請求すべし! Travel Tips

飛行機からの夕暮れ

EU圏ではフライトが遅延やキャンセル等になった場合に、
乗客に補償しなくてはならないものや賠償額が条例で決められています。

細かな条件等がありますが、
「3時間以上遅れ、もしくはフライトのキャンセル」で
一人当たり250~600ユーロの賠償金 (Compensation)が
支払われることがあります。




 
EU圏内に住んで3年、今までに
1度キャンセル&1度フライト遅延 (約8時間半)を経験し、
補償・賠償金を得たことがあるので、実体験を踏まえながら、
この条例の概要をお伝えできればと思います。

※下記は2019年1月の執筆時の情報です。
最新情報はCAAのサイト(英語)等でご確認ください。
CAA (Civil Aviation Authority; イギリス民間航空局)
https://www.caa.co.uk/Passengers/Resolving-travel-problems/Delays-cancellations/Your-rights/Your-rights-when-you-fly/




 
目次

  1. Flight Compensation Regulation 261/2004とは?
  2. 対象となるフライト
  3. 補償対象と賠償金額
  4. 遅延やキャンセルになった場合、どのような対応をすべきか
  5. 体験記: Ryanairの遅延 2018年夏




 

Flight Compensation Regulation 261/2004とは?

EU圏で定められている、遅延やキャンセルが生じた場合の
補償対象や賠償金額が決められている条例のことです。

格安航空会社も対象範囲です。
遅延の場合、3時間以上の場合は、
フライト代よりも多い賠償金を得られる場合もあります。




 
日本にはこのような条例はなく、
航空会社毎に対応はバラバラかと思います。

遅延の際に空港で使えるランチ・ディナー券をもらう、
フライトが次の日になった場合のホテル代・交通費程度のみで、
賠償金を航空会社からもらうという概念がありませんよね。

 

対象となるEUのフライトは?

  • EU圏発のフライトすべて
  • EU圏着のフライトかつ、EU圏の航空会社のフライト

が対象です。

EUにはスイス等は含まれませんが、
この条例のEU圏の定義では含まれます。
対象となる国は下記のページをご覧ください (英語)。
https://www.caa.co.uk/Passengers/Resolving-travel-problems/Delays-cancellations/Your-rights/Is-my-flight-covered-by-EU-rules-/




 

補償対象と賠償金額

遅延やキャンセル等により、航空会社に請求できるものは、
補償 (待ち時間中の飲食代やホテル代他)と
賠償金 (Compensation)です。

下記の3つによって、補償されるかどうかや賠償金額が変わってきます。

  1. 遅延・キャンセル・搭乗拒否のどれか
  2. 飛行距離
    飛行距離は3パターンあり、下記に分類されています。

    • 短距離: 1,500km未満
    • 中距離: 1,500km以上〜3,500km以下
    • 長距離: 3,500km超

    距離は下記のようなサイトで調べてください。
    www.airmilescalculator.com (英語)
     

  3. 最終目的地での遅延時間
    遅延時間の計算方法は、最終目的地に着いて飛行機のドアが開いた時です。
    乗り継ぎで、1便目が遅れて2便目に乗れずに別便になった場合は、
    2便目の実際の到着時刻と、当初の予定到着時間との差が遅延時間となります。




 

遅延の場合

飛行距離 補償対象が提供される遅延時間 賠償金額
短距離 (1,500km未満) 2時間超 3時間超遅延で250ユーロ
中距離 (1,500km以上〜3,500km以下) 3時間超 3時間超遅延で400ユーロ
長距離 (3,500km超) 4時間超 3時間超〜4時間以内遅延で300ユーロ
4時間超遅延で600ユーロ
  • 補償対象
    • 遅延による待ち時間中の飲み物・食べ物
    • 通信代 (主に電話代)
    • ホテル代 (日をまたぐ場合)とホテルへの往復交通費

    が補償対象のメインとなります。
    短距離フライトであれば2時間超の遅延で請求できます。

    良い航空会社であれば、
    飲食チケットやホテルを提供されることもあるかと思いますが、
    航空会社に対応してもらえなければ、
    自分で払って、後日航空会社へ請求することになります。

    この場合、合理的な金額内のみ補償対象となります。
    お酒や高級ホテルは対象外となるので、
    空港近辺のホテル相場を調べた上でご予約ください。
    また、飲食物やホテルのレシートは必ず取っておいてください。

    ただし…体験記にも書きますが、
    航空会社は支払いをしぶることが多いです。
    条例にはあってもなかなか支払ってもらえないこともあることを
    念頭に置いておいてください。




     

  • 賠償金
    航空会社側に責任のある理由での遅延で
    3時間以上の遅延があった場合は、飛行距離に応じて賠償金請求ができます。
    短距離フライトであれば、一人あたり250ユーロの賠償金が請求できます。
    ただし、遅延理由によっては請求できない場合もあります。
    ※条件の詳細はこちら: 賠償金が支払われる条件
     
  • 遅延が5時間超えならキャンセル無料 (The five-hour refund rule)
    遅延時間が5時間以上となる場合は、
    フライトのキャンセルが無料でできる権利が与えられます。
    使用前の帰りのフライト代等もキャンセルでき、
    返金請求ができます。

    遅延しているフライトより早いフライトが見つけられそうなら、
    キャンセルして新しく取る方法も取れます。
    もちろん、キャンセルせずに待ち続けることもできます。

    この制度を利用する場合は航空会社カウンターやホームページ等で
    キャンセル手続きを行って、必要に応じて返金請求をしてください。




 

フライトキャンセルの場合

  • 返金
  • 代替フライト

のどちらかを選べます。

返金の場合は、返金請求をして終了です。

代替フライトを選んだ場合は、代替フライトまでの時間まで、
飲食物やホテル代等が補償され、
フライト予定日の14日以内のキャンセル通知であれば、
賠償金請求ができる場合があります。

キャンセル通知が何日前にあったか、飛行距離、
代替フライトとキャンセルされた予定していたフライトの
出発&到着予定時間との差によって、
賠償金額が決まります。




  

  

  

  

キャンセル通知 距離 賠償金
7-14日以内 短距離
(1,500km未満)
  • 出発時間が2時間以内の早まりで、かつ、到着時間が4時間未満の遅れならゼロ
  • 上記以外で到着時間の遅れが2時間超で250ユーロ
  • 上記以外で到着時間の遅れが2時間以内で125ユーロ
中距離
(1,500km以上〜3,500km以下)
  • 到着時間の遅れが4時間超で400ユーロ
  • 出発時間が2時間超早まり、かつ、到着時間が3~4時間遅れで400ユーロ
  • 出発時間が2時間超早まり、かつ、到着時間が3時間未満の遅れで200ユーロ
長距離
(3,500km超)
  • 到着時間の遅れが4時間超で600ユーロ
  • 出発時間が2時間超早まり、かつ、到着時間が4時間未満の遅れで300ユーロ
7日未満 短距離
(1,500km未満)
  • 出発時間が1時間以内の早まりで、かつ、到着時間が2時間未満の遅れならゼロ
  • 上記以外で到着時間の遅れが2時間超で250ユーロ
  • 上記以外で到着時間の遅れが2時間以内で125ユーロ
中距離
(1,500km以上〜3,500km以下)
  • 到着時間の遅れが3時間超で400ユーロ
  • 出発時間が1時間超早まり、かつ、到着時間が3時間未満の遅れで200ユーロ
長距離
(3,500km超)
  • 到着時間の遅れが4時間超で600ユーロ
  • 出発時間が1時間超早まり、かつ、到着時間が4時間未満の遅れで300ユーロ




 

搭乗拒否の場合

  • 立候補 (volunteer)した
  • 強制的に搭乗させてもらえなかった (forced to be bumped)

のどちらかで、条例が適用されるかが決まります。

どちらの場合にせよ、

  • 返金
  • 代替フライト

のどちらかを選ぶ権利は与えられますが、
立候補 (航空会社側の要請を受けて承諾する)場合は、
航空会社側が提示した条件での対応となります。

強制的に搭乗させてもらえなかった場合に、
この条例が適用され、代替フライトを希望する場合、
代替フライトまでの時間の各種補償(飲食代やホテル代等)
を受ける権利があります。

また、賠償金 (compensation)も請求できます。

距離 賠償金
短距離
(1,500km未満)
  • 到着時間が2時間以内の遅れで125ユーロ
  • 到着時間が2時間超の遅れで250ユーロ
中距離
(1,500km以上〜3,500km以下)
  • 到着時間が3時間以内の遅れで200ユーロ
  • 到着時間が3時間超の遅れで400ユーロ
長距離
(3,500km超)
  • 到着時間が4時間以内の遅れで300ユーロ
  • 到着時間が4時間超の遅れで600ユーロ




 

賠償金が支払われる条件

航空会社側に責任のある理由での遅延やキャンセル、
オーバーブッキング等の理由で搭乗拒否された場合で、
各条件に当てはまる場合です。

例えば雪でフライトが遅れた・キャンセルした場合は、
航空会社のコントロール範疇外で航空会社の責任とは言えず、
遅延しても賠償金は請求できません。

2018年のクリスマスシーズンにロンドンのGatwick空港で
ドローンが飛んでいたという目撃情報により、
空港が閉鎖されて大混乱になりましたが、
このように空港が閉鎖されたことにより、
遅延やキャンセルになった場合も、
航空会社には責任がないため、
航空会社には請求できません。

これもー?!という感じですが、
計画的な航空会社のストライキの場合も
コントロール範疇外という判決が出たことがあり、
賠償金が支払われない場合があるようです。
ただしストライキはグレーゾーンで、
時と場合によって見解が分かれるようです。




 

遅延やキャンセルになった場合、どのような対応をすべきか

遅延やキャンセル等になった場合、
搭乗者に対してきちんとこの条例を説明しなくてはならない義務が
航空会社側にあるので、送られてくるEメールをよ〜く確認し、
情報がもらえなければ航空会社の人に聞いておきましょう。

届くメールには、ただ1文、
「あなたは各種権利があります。詳細はウェブサイトを御覧ください」
とリンクがある程度かもしれませんが、きちんとご確認ください!

当日は航空会社のカウンターに行っても
対応してくれない場合がほとんどで、
大抵の場合は、後日、自分で補償や賠償金の
オンライン申請をすることになります (特に格安航空会社)。




 
当日にできることは、とにかく証拠集め!

  • 飲食や移動・宿泊にかかった費用等のレシートを必ず取っておく
  • 搭乗券の半券やEチケットも必ず残しておく
  • 目的地に到着した時間をメモする

など、とにかく証拠や根拠を集めて、
オンライン申請に備えてください。




 

航空会社へ申請

まずは、各種航空会社の案内の通りに、
補償や賠償金額を請求してください。

大抵の場合はオンライン申請をしてくださいと
言われると思います。
各航空会社に申請ページがあるはずなので、
そのページから申請し、Eメール等で返信があるので、
必要に応じて対応し、入金されたら完了です。

ただ…航空会社側は払いたくないため、
なかなか対応してもらえなかったり、
何ヶ月もかかったりします…根気強く、粘り強く対応してください。




 

決着がつかなければADRやCAAへ申請

航空会社側と賠償金等について合意ができなかった場合は、
ADR (Alternative Dispute Resolution; 裁判外紛争解決)が
利用できる場合があります。

航空会社と搭乗者の間に入る第3者委員会のような役割を果たし、
双方の言い分を聞いた上で条例と照らし合わせ、
解決策を提案してくれます。

これを利用するためには、
航空会社自体がADRの団体に加盟している必要があります。

ADRに加盟している航空会社かどうかは下記のCAAのページで確認できます。
https://www.caa.co.uk/Passengers/Resolving-travel-problems/How-the-CAA-can-help/Alternative-dispute-resolution/




 
搭乗客と航空会社で合意ができなかった場合に、
航空会社側からADRへ依頼することになっていますが、
もし、航空会社側から8週間以上音信不通になれば、
搭乗客が直接ADR団体へ連絡することができます。

ADRに加盟していない航空会社の場合は、
CAA (イギリス)等に解決を依頼することもできます。
https://www.caa.co.uk/Passengers/Resolving-Travel-Problems/How-the-CAA-can-help/Refer-your-complaint-to-us/




 

賠償金請求代行サービス

下記の体験記に書いた通り、
条例の対象であっても、実際に支払ってもらうためには、
かなーり根気強く対応する必要があります。

そのため、成功報酬型で賠償金額の数十%を費用として、
請求代行をしてくれる会社もいくつかあるようです。
(「Flight Delay Compensation」等でググると、
たくさん広告が出てきます。)

このようなサービスを利用したことはないですが、
ゼロよりもマシと思えば、利用するのもありかもしれません。




 

体験記: Ryanairの遅延 2018年夏

※RyanairはもともとADRの対象となっていましたが、
 記事作成時点では、ADRから抜けてしまいました。

出発時間1時間前くらいに遅延が発表され、
4時間くらいの遅れと表示されていましたが
実際には約8時間半の遅延になりました。

航空会社のスタッフも理由を把握しておらず、
夜中の1時くらいにようやく搭乗ゲートを通過したものの、
そのまま1時間ほど通路で待たされた後、
ようやく飛行機に搭乗。

機長からの遅延の説明も
「機体の到着が数時間遅れたのは事実で、私も急に呼ばれて来ました。
 でも、なぜここまで遅くなったのかは私にもわかりません。
 申し訳ありません。」と言われ、結局理由がわからず…
航空会社側は遅延の理由を説明する責任があるのに、
最後まで理由の説明はありませんでした。




 
ロンドンのStansted空港に到着するはずでしたが、
フライトが8時間半も遅れ、着陸が明け方になってしまったため、
Stansted空港の運営時間外で着陸できないため、
急遽、バーミンガム空港に着陸しなくてはならないと離陸後に判明!

バーミンガム空港に着いたのは夜明け前。
夜中フライトとなり寝不足な上に、8時間半の到着遅れかつ
安全を顧みずにとにかく出発したために着陸場所が変更され、
ロンドンから電車で1時間以上もかかる場所に降ろされ、
搭乗客はみんな大激怒していました。




 
さらにひどかったのは、賠償金請求をした際のこと。
Ryanairのホームページから補償・賠償金のオンライン申請をしました。

請求したのは下記3つです。

  1. 賠償金 (短距離フライト・8時間半の遅延なので250ユーロ/人)
  2. バーミンガム空港からロンドンまでの電車代
  3. 待ち時間中の飲食代

Ryanairから返信はありましたが、
「Stansted空港が運営しておらず、着陸できない状況で
安全上の理由から遅延したので、賠償金を支払わない」との返信。

いやいや、そもそも出発が何時間も遅れたから、
空港の運営時間外になったんだし、出発が遅れた理由は結局説明無し。

電車の費用については
「バーミンガム空港からStansted空港まで
タクシーを提供したので支払わない」とのことでした。
タクシーより電車の方が安いはずなのに…
Stansted空港経由にわざわざしてほしくないし、
直接ロンドン中心地までの方が早くて楽なのに…

待ち時間中の飲食代については触れられてもいませんでした。




 
そこで「そもそも、出発時間が遅れたから空港が運営時間外になったので、
賠償金は支払われるべき」とRyanairに返信しましたが、音信不通に。

8週間以上返信がなかったので、
当時は利用できたADRに申請。
私達の申請内容の確認とRyanair側への聞き取り調査をADRが行い、
ADRに申請してから約3ヶ月かかりましたが、
ADRは私達の主張を全面的に認めてくれ、
請求した3つすべてにおいて、Ryanairが支払うべきとの見解を出してくれました。




 

Ryanairをオススメしない理由

Ryanairは格安航空の中でも価格の安さが際立っていますが、
特に飛行機旅に慣れていない人には、
格安航空会社の中でも、あまりオススメできない航空会社です。

安く見えますが、とにかくありとあらゆる物に
追加料金がかかるようになっています。

Ryanairあるあるとして、
チケットを印刷して持っていかないと、
カウンターでお金が追加で取られます (しかも結構な金額)。
Ryainair初の人は大抵このトラップに引っかかる!

持ち込み手荷物の基準も厳しく、
大きい・個数が多いとお金がかかります。

「Ryanairあるある」等でググるともっとたくさん出てくるので、
よく調べた上でご利用ください!




 
そして今回の遅延時の対応や説明、
賠償金請求に対する対応も不十分としか言いようがないのに、
現時点ではADRにも加盟しておりません。
このADR制度は搭乗客を守るだけでなく、
モンスタークレーマーから航空会社を守るためでもある制度なのに、
Ryanair側は「ADRの判断は不満」ということで脱退しました。

私も巻き込まれた2018年の夏は、
遅れやキャンセルがたくさん生じた上に、
賠償金もきちんと支払われていないため、
CAA (イギリス民間航空局)が、Ryanairに対して
きちんと搭乗客に賠償金を支払え!と裁判を起こしたと
イギリスでニュースになりました。
※参考記事 
Ryanair compensation claims to go to court (BBCの英語記事)

 
何も問題が起こらなければ安くていいかもしれませんが、
何かが起こると、対応がひどい可能性があります。




 
数年前にもスペインの格安航空会社でも
搭乗直前でフライトキャンセルになり、
返金請求をしたことがありますが、返金ですら、
本当に根気よく対応しないと、なかなか支払ってもらえませんでした。

今回のRyanairの遅延による賠償金の請求も、
途中で何度も心が折れかけて諦めそうになりましたが、
根気強さときちんと権利を主張することが海外では重要です!!